ゴールデンウィークを過ぎると、いよいよ暖かい日が多くなる。
帰り道の冷え込みもなくなって、すっかり上着がいらなくなった。
「この時計は間違いなく直りますよ。まったく問題なし。」
「あー、よかったー。 前に、部品が無いから直らないって言われたんですよ。」
あるご婦人がお持ちになったのは、1940年代、OMEGAの腕時計。
まだまだしっかりした作りをしていた頃の手巻きで、いくらでも直せる時計だった。
「それにしてもホント偶然、、吉祥寺の時計屋さんだったんですねー。 ビックリしちゃった。」
「え、、?」
、、、一体、どういうことだろう?
初対面の方なのに、、どうして?
「私、よくお見かけするんですよ。 あはは。」
そのお客さまは、そう言って屈託なく笑った。
え? なぜ?
ポカンとする私に「だっていつもサスペンダーしてるじゃないですかー。 すみません、私も国立なんですけど、前からうちの主人と、あのサスペンダーの人いつもこの辺歩いてるねなんて言ってたんですよ。」
なるほど。
時計の修理を持ち込んだ店が、たまたま地元で見かけるオジサンの店だった、ということか。
ようやく合点がいった私も、思わず笑ってしまった。
確かに私は、いつもサスペンダーをしている。
上着のいる時期は別として、暖かい時期はいつもシャツにサスペンダーでウロウロしているから、、何度か見掛けると、目につくようだ。
そう言えば、以前、アパレルの仕事をしている方に「中島さん、サスペンダーっていうのは下着みたいなもんだから、本当はそのままで出歩くもんじゃないんですよ。」と言われたことがあった。
言われて見れば、、、サスペンダーとシャツだけで歩いている人は、あまり見たおぼえがない。
でもファッションに疎い私は、今も結局そのまんま。
そのせいか、あちこちで知り合いから「この間見かけたよー」なんて言われることが多いのだ。
サスペンダーをするようになったのは、30年くらい前だったか?
きっかけは、銀座の百貨店催事。
馴れないスーツ姿で店頭に立っていると、なぜかズボンが下がってシャツが出てくるのが気になって仕方ない。
で、しょっちゅうシャツを直してバンドを締め付けていたら、見かねた同業者が「サスペンダーするといいよ」なんて教えてくれて、、そのまま洋服売り場に行って、買ったのだった。
以来、仕事の日は常にサスペンダー。
こんな楽なもの、二度と手放せるもんか。
いつの日か、オリジナルウォッチが成功してマサズ パスタイムが有名になった時(?)、、、サスペンダーがトレードマークになったら面白いかなーなんて、妄想しているところなのだ。
(続く)