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Channel: 吉祥寺の時計修理工房「マサズパスタイム」店主時計屋マサの脱線ノート
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「神のみぞ知る」

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暑い暑いと言っていたと思ったら、このところ急に涼しくなった。
 

今月も、残りはあと数日。
 

来月、再来月が過ぎればもう師走に入るから、今年もいよいよ、終盤戦の入り口に突入か。

 

早春に始まったコロナ騒動以来静かだった店頭も、このところようやく(ちょっとだけ)賑やかになってきた。
 

一時は外出自体を控えていた方たちも、もうそろそろ、といった感じだろうか。

 

ご存じの通り、コロナウィルス感染症に関してはありとあらゆる情報が錯綜していて、何が本当なのか誰にも分からない状態。
 

そんな中、無知識な私は努めて普段通りの生活をしている(マスクや手洗い、うがいははしてます)。
 

世間の例にもれず、店の商いは少なからず影響を受けているが、、それはまあ仕方ない。

 

それ以外の不便と言えば、海外に買い付けに行けないことくらいだろうか、、。

 

 

明るいニュースもある。

 

こんな状況下でも修理品のボリュームは減っていない、というか、むしろ増えているのだが、、このところ、3年生の佐々木と真下が力をつけてきたことで、私や岩田は複雑時計の修理その他に専念できるようになり、修理品の納期が大幅に短縮されてきたのだ。

 

一番ひどかった4~5年前など、定期整備を含めた修理品の納期が、1年を優に越えていた。

 

「すみません。 今お預かりしても、お返しは再来年の初めくらいになるんですよ」

 

「えーーっ! 」

 

初めて修理をお持ちになる方などびっくりしてしまって、、修理を諦めてしまう方もいらっしゃったほど。

 

今現在、御予約いただいた修理品を前倒しし始めていて、新規のお預かり品も2ヶ月くらい(物により前後)になっているし、来年明けくらいには、お預かりして1ヶ月後にはお返しできる、つまりいたって正常な状態になる予想だ。

 

 

加えて、来年度は更に2人の新人の入社が内定した。

 

こんな状況下での増員に関しては、周囲や身内からも首をかしげる向きがあったのは確か。

 

「えーっ、大丈夫ー?」

 

まあ、これは当たり前か、、。

 

景気が低迷している中でスタッフを増やせば、店の経営を圧迫することになるのは誰が考えても明白。

 

さすがに私も、それは覚悟している。

 

 

それでも敢えて人を増やすことにしたのは、、、この30年のパスタイムの変遷や自分の年齢を考えた場合、ずっと思い描いていた夢を叶えるためには、それなりのリスクを負っても勝負するしかないと考えたからだ。

 

 

ご存知の通り、「オリジナルムーブメント」 の構想は、もう何年も始めては止まりを繰り返して、宙ぶらりん。

 

いい線まで行きかけては手が足りなくなり、、日常の仕事をこなすために、とりあえず先延ばし。

 

「いつ頃できるんですか?」 「早くしてくれないと、年取って死んじゃうよ」

 

そんな声もチラホラ聞こえて、その度に心苦しく思っているけど、、。

 

 

プロジェクトの中心になっている岩田は、私とともに厄介な複雑時計や大掛かりな修理品を担当しているから、、それが私一人の手に余る状態になると、プロジェクトは止めることになる。

 

これを解決するには、やはり人を育てる以外に方法がない。

 

 

仮に3年生の二人が更に経験を積んで、数年後に大掛かりな修復作業を任せられるようになれば、岩田や私の手は空く事になる。

 

しかしその時は、今彼らが担当している仕事をする別の人間が要る。

 

ことアンティーク時計の修復に関しては、その時になってどこかから即戦力の人間を連れて来ることができないから、、どんなに苦しくなっても、今やるしかないと腹をくくった訳だ。

 

 

もちろんオリジナルムーブメントが完成しても、それが人々に受け入れられるかどうかは分からない。

 

不評なら店は傾くことになるかもしれないが、、その時は、潔く諦めるつもりでいる。

 

性格的に、やるだけやってダメなのは納得がいくが、やらずにこのままただ老いていくのは、我慢できないのだ。

 

 

ちなみに来年入社予定の新人2人は、若干22歳と26歳の若者。

 

私の子供で全くおかしくない歳だが、、1人はエングレイブをやるから将来は辻本の手助けができるようになるかもしれないし、もう1人はLange&Sohneが主催した今年のランゲアワードで金賞を取った、期待の新人だ。

 

もっとも4月からの3ヶ月はパスタイム名物 「地獄の研修」 があるから、、、「もう辞めます」 なんてならないとも限らないが(笑)、、。  

 

 

とにもかくにも、どうなることやら。

 

でも心配しても、はじまらない。

 

先の事は、神のみぞ知る、なのだ。

 

 

 

 

 

 

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