「うちも、もう少し手頃な価格の商品があるといいんですけどねぇ、、。」
ウェブサイトの商品ページをいじりながら、寺田がボソッともらした。
130万円、、280万円、、300万円、、商品欄にアップされた時計を見ると、、確かに最近 「0」 の数が多くなっている。
笑い話にもならないが、、売っている当の私など、おいそれと買えない値段の商品が多くなっているのだ。
「これ、って言う時計を探してる方はいいと思うんですけど、、もうちょっと手頃にっていうのもあったらなぁ。」
確かに。
思わず、ジャンクヤードの時代の、「手頃な商品だらけ」 だった店頭を思い浮かべた。
記憶にあるのは、ハミルトン992鉄道時計48000円、、ブローバ腕時計29000円、、K14のロンジン懐中時計で120000円。
あの頃は、10万円を超えるものは、ごく一部だったような。
アンティークウォッチの相場が上がったのは確か。
でも、懐中時計に限って言えば、かなり控えめな上昇と言える。
少なくとも腕時計のように、当時7~8万円くらいだったオメガのスポーツモデルが、今は100万円、みたいなことはない。
それよりも、あの頃は仕入れた商品にお金が掛からなかった。
例えば、、、アメリカに行って、ハミルトンが992を100ドルくらいで買ってくる。
当時のレートで、25000円というところか。
先方曰く 「オーバーホール済み」 があてにならないことは今でこそ分かっているが、、、当時は普通に動いて時間もまあまあ合うとなれば、そのままオーバーホール済みということで48000円で店頭へ。
確かまだ、消費税は導入前だったかな。
一応 「一年保証」 は謳っていたから、万一調子が悪いとなればそこは直してお返しするが、、何もなければそれでおしまい。
定期整備をお薦めすることもないから、だいたいは皆さん壊れてから修理に出すという感じで、、戻ってきた時計を開けてみて、部品の傷み具合にビックリということも多かった。
ちなみに同型のハミルトン992は、現在パスタイムの店頭で税込み¥180000.
おおよそ4倍近い値段の差ということになるが、それはなぜか?
同型機の現在の通り相場は、程度によってだいたい300~400ドルくらい。
おおよそ3万円ちょっとから45000円くらい。
30年前の倍もいかないくらいだから、、物価の上昇率を考えれば、劇的に上がったとは言えない。
さてさて、パスタイムでは、ここから先にかなりの手が掛かる。
平均的なところをざっと上げると、、外装だけでも傷の多いガラス風防の交換、裏蓋やベゼルの凹みや開閉のゆるい蝶盤の修理、、、くたびれたヨツバネや巻き真、リューズの交換等。
ムーブメントに関しては、ほとんどの個体に磨耗の見られる天真、へたりきったゼンマイも新品に交換、その他ヒビの入った穴石や伏せ石、不揃いなネジやシャトンなどがあれば交換し、最後に日差10秒以内で作動するよう、調整を追い込む。
ちなみにこれらの作業には、外装の仕上げに平均1~2日、ムーブメントの方に3~4日の時間が必要。
「そんなにかかるのは、腕が悪いんじゃないのー?」 なんて思う方もいらっしゃるかもしれないが、、そうじゃないんですよ!
大まかにやるならあっという間にできることが、本当にちゃんとやるとなると、何倍も時間が掛かるものなのだ。
さて、ここからが面白いところ(?)
この商品の納品までに掛かる費用の内訳は、、、
①外装担当者、1~2日の工賃と、ムーブメント担当者、3~4日の工賃
②材料代 (ガラス風防、リューズ、ヨツバネやゼンマイ、洗浄液、場合によっては金シャトンの金材料代 )
③時計の仕入れ価格¥40000
④消費税
上記の全てを合算したものを、商品価格¥180000(税込み)から差し引くと、、、どうなるか?
そう。
私たち職人の賃金をウィグルなみにしない限り、、いくらも残らない。
そんなことでは2年間の無料修理保証などとてもできないし、すればパスタイムは潰れてしまうだろう。
入門編の時計も必要だからと、無理は承知でやってはきた10万円台の商品がほとんどなくなったのには、そんな訳があるのだ。
それでも、入門編の時計に代わる、何かいい策はないか?
「いい時計だとは思うし欲しいけど、、、もうちょっと手ごろな値段だったらなぁ。」
「精度にはあんまりこだわりがないし、外装やネジの見た目なんかそのままでもいいだけど、、。」
頂いたそんな声にお応えするべく、無い頭をひねりにひねって今回採用を決めたのが、、、下記の販売商品のグレード分けだ。
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① MP (Masa's Pastime) グレード
--- 最高級グレード 従来通りの仕上げ、保証内容 ---
・外装・内装の、然るべきレストア・仕上げ
・分解・組み立て時のクローズアップ画像(印刷・データ)の添付
・最上級の精度保証
・全ての自然故障に関して、2年間の無料修理保証
・定期整備における、最大限の割引き率(2年以内 50% 3年以内 40%)
② R (Repair)グレード
--- 一般修理品と同様の処置、保証内容 ---
・ムーブメントの必要充分な整備
注)
動作、使用に問題がない限り、内装、外装とも部品は現状のまま
分解画像の添付はなし
・より一般的な精度保証
・自然故障に関して、2年間の無料修理保証
(※経年劣化等による部品の破損を除く)
・定期整備の費用、割引き率は、修理品と同様(2年以内 30% 3年以内 20%)
③ A(as is) グレード
・全くの現状販売
時計の動作に関して一切の保証なし
注)但し、時計自体の真贋は保証(永久)
☆特典
MP以外のグレードで時計をご購入された方は、差額分のご負担をもって、上級グレードへアップグレードすることが可能。
・Rグレードの時計の場合 ご購入後2年以内、その間、他店での整備歴がないことが条件
・Aグレードにてご購入の時計の場合 ご購入後1ヶ月以内、その間、他店での整備歴がないことが条件
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例)
当店在庫 iAP-2044 「Hamilton 992 ¥180、000 税込み」 の場合
MPグレード ¥180,000(日差10秒以内 2年間保証)
Rグレード ¥120,000(日差30秒以内 2年間保証) 差額¥60,000にて、MPグレードにアップグレード可能(2年以内)
Aグレード ¥60,000(保証なし) 差額¥60,000にて、Rグレード、差額¥120、000にてMPグレードにアップグレード可能(1ヶ月以内)
既にレストア済みの商品などに関しては①のみの設定になるし、現状の時計の状態、仕入れ価格の関係などによって、価格差は一定にはならない。
また、③などは全ての商品に設定できるわけではないが、、少なくとも、今までよりは多様なご要望に応じた選択肢ができたのではないかと思っている。
本来の姿に、きちんと仕上がった時計が欲しいという方。
安心して使用できる状態にあれば、外装や部品の見た目は気にしないという方。
アンティーク時計が好きで集めているが、そもそも使う気はないし、見た目もそのままでよいという方。
これを機に、より多くの方にアンティーク時計を楽しんでいただけたらと思う。
それぞれのグレードの内容の詳細に関しては、いずれホームページ上の 「修理・レストア」 でもご説明差し上げるようにしますが、これには少々時間が掛かりそう。
とういうことで、まずは本日より商品ページにそれぞれの価格表示を順次入力していく予定ですので、是非ともそちらをご覧下さい。
最後に、2日前より弊社ウエブサイトの 「商品」カテゴリーに、 「その他の商品」 が追加されました。
既に時計以外の商品(オリジナルキズミ 懐中時計礼讃) がアップされていますが、近々「フレーム入りムーブメント」 等も追加していく予定ですので、こちらも併せてご覧下さい。
それでは、今後ともマサズ パスタイムを何卒よろしくお願い致します。