12月26日(土曜日)
今日は、年内の営業最終日だ。
振り返ってみると、今年は本当に大変な一年だったとつくづく思う。
4月のある晩。
「ねえ、店の子たち、どうすんの? 心配だから、休ませてあげた方がいいんじゃない?」
緊急事態宣言のニュースに食いつきながら夕食をとっている私に、かみさんが言った。
「うん。 なんだかよく分かんねーからなぁ、、。 明日みんなに希望聞いて、リモートもありにするよ。」
「その方がいいよねー。 でもみんなリモートになったら、店閉めるようだね、、。」
「いや。 店は開けるよ。 1人でも。 それにどのみちこれじじゃあ、そんなにお客さん来ないだろうからな。」
「まあそうかもね。。」
翌日、開店前にみんなに聞いた。
「リモートで仕事するか、時間短縮で出て来るか、、どっちでも希望でいいぞ」
「、、、、」
しばし無言。
最初に口を開いたのは、真下だった。
「リモートだと、何すればいいんですかね?」
真下の質問に、他の連中も興味津々。
「んー、リモートの場合はなー、、、まあ時計の歴史とか各メーカーの変遷なんかの資料を作ったりしてもらうことになるかな。 その他、思いつくことがあったらなんでもいいけど。」
前夜からずっと頭をひねっていたが、私が思いつく事は限られていた。
なにしろ30年店をやっていて、こんなことは今まで一度もなかったのだ。
「んー、、。」 「、、、、。」
みんな考えているようだが、誰からも返事はない。
「お前なんかさ、一番通勤が長いし、よくインフル食らったりしてるから、リモートの方がいいだろ?」
私は、船橋から通勤している寺田に話しをふった。
「、、、いや、、へへへ、ボクはみんなに合わせます。」
体調を壊しやすい寺田がかなりビビッているだろうことは想像がついたが、、性格的に、言い出しにくいのだろう。
「いや、みんなに合わせなくていいよ。 自分がどうしたいかで決めていい。 」
普段の私はかなりワンマンの方だけど、これは全てに関して、私が責任を負っているからだ。
反対に言うと、私が責任を負えない事に関しては、本人が決めるべきだろう。
「あー、ボクは普通に出勤で。 家にいても面白くないですし。」
最初に口を開いたのは、最年少のゴリン(佐々木)だった。
そもそもやつはあまり気にしていないようで、、まだマスクすら持っていなかった。
「出勤で。」 「あ、私も出勤で」
真下、辻本に続き、「ボクも出勤でいきます」 と寺田が続く。
返事のない岩田に関しては、、20年以上の付き合いで、最初から答えは判っていた。
「よし。 じゃあ当面の間、12時~6時でやるから。 その後のことは、また成り行きでな。」
その後、緊急事態宣言の解除後は通常営業に戻り、、、結局、そのまま年末まできたのだった。
正直、ありがたかった。
そんな状況でも定期整備の時計は普通に送られてきていたし、修理の依頼もいただいていたから、、仕事は進めなければいけない。
もちろん、資料作り等は無益ではないが、、優先順位は明らかだ。
もちろん、ありがたいと言えば、お客さまには感謝しきれない。
高齢の方が来店されないのは仕方ないとして、、状況を考えれば、本当に多くの方が足を運んでくれたり、メールで注文をくださったりした。
もしそうでなかったら、パスタイムは相当なピンチに陥っていたはずで、、、こうして無事に年を越せていなかったろう。
本当に、本当に、ありがとうございます。
閉店時間が近づいた店内。
店頭にいらっしゃる常連のお二人は、マスクをした辻本や寺田と話し込んでいる。
真下、佐々木は、新年に納品予定の時計の整備。
最後尾の岩田は、かなり大掛かりなクロノメーターの修復を始めたところ。
今年は、恒例の焼肉忘年会は中止。
閉店後は、デリバリーのピザで、スタッフのみの食事会になった。
最初から最後までコロナに翻弄された2020年だったが、、明けない夜などない。
(続く)
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あらためまして。
マサズ パスタイムを応援して下さる皆さん。
今年も、本当にお世話になりました。
2021年も、どうかよろしくお願い致します。
中島正晴